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『ひとたびバイクに ツーリングを愛する者たちへ』山田深夜

ツーリング

本書の概要

『ひとたびバイクに ツーリングを愛する者たちへ』はツーリングをする人々の短編集だ。バイクに乗って旅をしたことがある方であれば、きっと似たような思い出を持っているのではないだろうか。

山田深夜さんはバイク乗りでもあり、『千マイルブルース』や『ロンツーは終わらない』など、バイク旅に関する小説を多数出版している。また、バイク雑誌に寄稿しているほか、落語家とコラボしてバイクツーリング落語(創作落語)を発表したりしている。バイクツーリング落語のほうも一度聞いてみたいところだ。

あらすじ

この作品はツーリングを通して人間模様が描かれており、情景や登場人物の心の動きが丁寧に描かれている。微笑ましいすれ違いであったり、予期せぬ喜ばしい再会であったり。『ひとたびバイクに』というタイトルには、「一度(ひとたび)」と「人(ひと)旅(たび)」というダブルミーニングがある。

『ひとたびバイクに』というタイトルなのだから、バイクの描写も出てくるんだろうと思っていたが、本作にはバイクそのものの描写はあまり出てこないのが意外だった。バイクは脇役のようにすら見える。

おそらく作者は、バイクに乗ることで得られる人間模様であったり、バイク乗りのこころの変化を描きたいと思っているのではないだろうか。その人情の機微は、バイクがなければ得られないものでもあるのだ。

所感

バイクの専門的な話が出てこないので、ツーリングの経験がなくても難なく読めてしまう。バイクに乗ってツーリングをするようになったらもっと楽しめる作品に違いない。わたしがバイクに興味をもったきっかけの1つはこの小説だった。本作を一編ずつゆっくりと読み進めていって、街中にあるバイクが何かと目につくようになり、読了した後の勢いに任せてバイクの免許を取った。

誤算があったとすれば、バイクを買う踏ん切りがなかなかつかなかったことだ。費用を抑えるために中古でバイクを購入しようと探していたが、思いのほか値段が高くびっくりした。新車のバイクの供給が追いつかず、中古車の過価格が高騰しているらしい。

わたしが狙っていた250CCレブル(HONDA)もかなりの人気車種で、中古車の買取からして60万円オーバーと高額だった。
※参考:オンラインでバイク査定するならバイクワン

ちなみに、この話を友人(ロードバイク乗り)にしたら、「チャリより安いじゃん。買ったら?」と言われて、乗り物に取り付かれた人間の金銭感覚はこんなに狂ってしまうのかと思うと、手を出すのがますます怖くなってきた。とりあえず、小排気量でトコトコ走るところから始めてみようと思っている。