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『十六夜日記』阿仏尼

本書の概要

『十六夜日記』は鎌倉時代に活躍した女性作家、阿仏尼が記した紀行文です。この作品は、阿仏尼が自らの子供のために相続争いの訴訟で鎌倉へ向かう際の旅を描いており、紀行文としての価値だけでなく、当時の社会背景や女性の生き方を垣間見ることができます。約1700冊以上の辞書や事典を収録する日本最大級のオンライン辞書・事典・叢書サービス「ジャパンナレッジ」で閲覧することができます。

あらすじ

物語は、阿仏尼が亡き夫、藤原為家との間にもうけた子供のため、相続争いの訴訟を抱え、鎌倉へ旅立つところから始まります。弘安2年(1279年)10月16日、京都を出発した彼女は、東海道を経て鎌倉に向かう道中の様子を綴っています。旅の動機、道中の記、鎌倉滞在中の出来事が一つの巻にまとめられ、100首を超える和歌も挿入されています。道中では『伊勢物語』の影響が見られ、阿仏尼の文学的教養の高さが伺えます。

おすすめしたい内容

まず、この日記の魅力はそのリアリティにあります。旅の困難さや道中の風景、出会った人々との交流が細やかに描かれており、まるで一緒に旅をしているかのような臨場感があります。また、阿仏尼が詠んだ和歌は美しく、その場の情景や心情が鮮明に浮かび上がります。例えば、「ゆくりもなく、いさよふ月に、さそはれいづる」という一節からは、旅立ちの日の迷いや不安が伝わってきます。

さらに、鎌倉時代の女性の生き方や社会的地位についても考えさせられます。阿仏尼は一人で訴訟のために旅をするという、当時の女性としては非常に勇敢な行動を取っています。彼女の強さと母としての愛情が、この日記を通じて強く感じられます。

所感

『十六夜日記』を読むと、現代の私たちも旅の素晴らしさを再認識させられます。阿仏尼のように、何かを守るために旅をする姿勢には共感できるものがあります。特に、旅行好きな女性にとって、この日記は古典文学としての魅力だけでなく、自分自身の旅に対する情熱を再燃させてくれる一冊です。

私自身もこの作品を読みながら、阿仏尼が見た風景や感じたことに思いを馳せ、彼女の強さと優しさに心打たれました。旅先での出会いや出来事が、彼女の和歌と共に鮮やかに描かれているため、どことなくロマンティックでありながらも、現実的な一面を感じさせてくれます。

皆さんもぜひ、『十六夜日記』を手に取ってみてください。阿仏尼の旅に共感し、古典文学の奥深さを楽しむことで、次の旅行のプランを立てる際に新たなインスピレーションが得られるかもしれません。この読書日記ブログが、皆さんの旅と読書の楽しみをさらに広げる一助となれば嬉しいです。